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エコノミークラス症候群の一例と文献的考察
平野 二郎,古田 凱亮,高橋麻衣子
川瀬  仁,小林 正嗣,相良 大輔
白石  好,中山 隆盛,西海 孝男
森  俊治,磯部  潔
静岡赤十字病院外科
 【症例】28歳オーストラリア人男性
 【主訴】左下腿痛  (既往歴,家族歴)特記すべきことなし
 【現症】ニュージーランドより日本へ向かう途中,雪による走行不能により,20時間もの飛行機内の拘束をうけた.
 降りた直後より,Homan's徴候陽性の左下肢の軽度の腫脹と著明な疼痛が認められた.
 呼吸器系の自覚症状は認められなかった.
 凝固系検査や静脈造影検査により,エコノミークラス症候群と診断された.
 【考察とまとめ】エコノミークラス症候群は,航空機による旅行に関連した深部静脈血栓症,肺塞栓症で近年増加傾向にある.
 長時間の窮屈な座位で下肢の静脈の血液の欝滞,膝下静脈・大腿静脈の屈曲による血流の障害,それに脱水による性状の変化,長時間の旅行という特殊環境などが誘因となり,発生すると考えられている.
 これらの他に患者個人の危険因子としては,一般の静脈血栓症の場合と同様で,手術・外傷・悪性腫瘍・心疾患や静脈血栓症の既往や下肢静脈瘤などが言われている.さらに最近では先天性・後天性の血栓性素因も注目されている.
 症状の典型的なものでは,長時間座位の後初めて立ち上がったり歩行し始めた時に,胸痛・呼吸困難や意識消失などの肺塞栓症状を起こすとされている.
 しかし血栓の性状によっては,軽い胸部症状や本症例のように下肢の疼痛・腫脹のみの症状が軽度なものもあり,このような疾患があることを念頭に置かないと見過ごす恐れは十分に考えられる.
 当院で認められた本症例の病態を分析し,その危険因子などが述べられた文献を参考に比較検討し,考察を踏まえ報告する.
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